事業をスタートする前や事業が軌道に乗り出し、法人化(法人成り)についてお考えの際に、気になるのは税金対策ではないでしょうか。
今回は、「節税するならどちらがお得?個人事業主と法人で知っておきたい3つのポイント」をお届けします。
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節税するならどちらがお得?個人事業主と法人で知っておきたい3つのポイント
その1:個人事業主が納める税金を整理しましょう。
個人事業主とは、法人を設立せずに自ら事業を行う個人を言い、4種類の税金を納める義務があります。消費税については、個人事業主と法人に大きな差がありませんので、消費税を除く3種類の税金について確認していきましょう。
【1.所得税】
個人の所得税では、課税される所得金額が多くなればなるほど、高い税率が適用される「超過累進(るいしん)税率」がとられています。表①の赤字箇所にご注目ください。
個人事業主では「稼げば稼ぐほど税金に取られる」仕組みになっています。
表①所得税の速算表(平成27年分)
課税される所得金額…A | 税額 |
195万円以下 | A×5% |
195万円超 330万円以下 | A×10%- 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | A×20%- 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | A×23%- 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | A×33%- 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | A×40%- 2,796,000円 |
4,000万円超 | A×45%- 4,796,000円 |
例えば、ある個人事業主が1,000万円を売り上げ、その費用に200万円かかった場合は、1,000万円-200万円=800万円が利益となり、800万円に対して所得税が課税されます。
課税される所得税を表①をもとに計算してみましょう。
800万円は表①では、「695万円超 900万円以下」に当てはまりますので、計算式は「A×23%-636,000円」を使います。
【例①】800万円に課せられる所得税額
800万円×23%-636,000円=1,204,000円 |
このケースでは、1,204,000円を所得税として支払うことになります。
【2.個人事業税】
前年の所得金額に対して、年2回に分けて個人事業税を納めます。
個人事業税=(事業所得の金額-290万円)×税率
計算式の290万円は事業主控除額で、全ての個人事業主に適用されますので、事業所得の金額が290万円以下の場合は個人事業税がかかりません。税率は業種によって3%~5%ですが、ほとんどの業種で5%が適用されています。
【3.個人住民税】
前年の所得金額に対して、年4回に分けて個人住民税を納めます。
個人住民税
◇均等割…所得の大小に関わらず、一律4,000円が課せられます。
◇所得割…前年の所得金額に対して、一律10%が課せられます。
その2:法人が納める税金について整理しましょう。
法人も4種類の税金を納める義務があります。消費税を除く3種類の税金について、確認していきましょう。
【1.法人税】
法人税は、個人事業主での所得税にあたり、現在の法人税率は下記の通りです。
法人税率(平成27年~平成29年3月末)
所得 | 税率 |
年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超えの部分 | 23.9% |
※資本金1億円以下
法人税率は所得に対して二段階の区分しかありませんので、800万円を超えると一律23.9%の税率となり、個人事業主のように「稼げば稼ぐほど税金に取られる」仕組みにはなっていません。
【2.法人事業税】
法人事業税は、都道府県から課される税金です。
法人事業税=所得×税率 |
税率は都道府県ごとに異なります。ここでは東京都の法人事業税についてご紹介します。
東京都の法人事業税の税率表(平成27年)
所得 | 税率 |
年400万円以下 | 3.4% |
年400万円超え800万円未満 | 5.1% |
年800万円以上 | 6.7% |
※普通法人で資本金1億円以下、所得5,000万円以下
【3.法人住民税】
法人住民税の税率は、都道府県・市町村ごとに異なります。ここでは東京都内の法人住民税についてご紹介します。
法人住民税
◇法人税割…法人税額×税率(都内:12.9%)
◇均等割…7万円(資本金1千万円以下で従業員50名以下)
法人住民税では、個人住民税と異なり、事業が赤字になっても均等割の部分については支払わなければなりません。
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その3:一定の所得を超えると法人がお得です。
個人事業主と法人が納める税金をご紹介してきましたが、一定の所得を超えると法人化した方が節税効果が高く、お得になると言われています。特に、所得税と法人税で大きな差がつくためです。
利益を500万円~600万円以上出すことができる場合は、法人化を検討してみましょう。法人化すると法人登記費用や税理士への報酬、社会保険の加入等で新たな費用負担も生じますが、一定の所得を超えた上で法人化すると、一般的にはメリットがデメリットを上回ります。
メリットの一例として、例①の個人事業主が法人化した場合についてご紹介します。
例①の利益800万円が「社長に対して、法人から支給される給与」という形で扱うとどのようになるのでしょうか。
同じ800万円ですが給与として支給されると、表②の計算式をもとに給与所得控除が差し引かれます。
表②給与所得控除額の算式(平成27年分)
給与の収入金額 | 給与所得控除額 |
162万5,000円以下 | 65万円 |
162万5,000円超 180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+ 180,000円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+ 540,000円 |
660万円超 1,000万円以下 | 収入金額×10%+ 1,200,000円 |
1,000万円超 | 収入金額×5%+ 1,700,000円 |
800万に対する給与所得控除額を計算してみましょう。
【例②】800万円の給与に対する給与所得控除額
800万円×10%+1,2000,000円=200万円 |
このように、給与として支給されると200万円が給与から控除されるので、800万円-200万円=600万円が所得として扱われ、600万円に対して所得税が課せられるとこととなります。
表①をもとに600万円に課せられる所得税額を計算してみましょう。
【例③】600万円に課せられる所得税
600万円×23%-636,000円=744,000円 |
社長として給与を受け取る場合は、744,000円を所得税として支払うことになります。
つまり、所得税については法人化することで1,204,000円-744,000円=46万円が個人として節税できることが分かります。
また、法人では社員の給与を経費として会社の儲けから差し引くことができますので、法人税の節約にも繋がります。
給与所得控除のみを詳しくご紹介しましたが、扶養しているご家族がいる場合に適用される配偶者控除や扶養控除についても、個人事業主が配偶者や子どもを事業に雇い、青色事業専従者となっている場合には適用することができません。
その他、法人化することで役員社宅や出張手当、社員旅行についても経費として計上することができ、法人ならではの節税術を利用することができます。
あとがき
いかがでしたでしょうか?
個人事業主と法人の分岐点では、どれだけ利益を出すことができるかが大切です。
今回は、「節税するならどちらがお得?個人事業主と法人で知っておきたい3つのポイント」をお届け致しました。最後までお読みいただきありがとうございます。
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